連載 PCメンテナンス&リペア・ガイド
第3回 メモリ増設前の基礎知識
2. メモリにまつわるスペックの読み方
林田純将
2001/06/01
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メモリを購入する際に気を付けるのは、SDRAMやRDRAMなど、主にメモリの種類の違いだ。しかし、そのほかにもメモリを選ぶ際に出くわす用語がいくつかあるので、ここで紹介しておこう。
CAS Latency(Column Address Strobe Latency)
「キャス・レイテンシ」と読む。メモリのスペックでは「CL2」や「CL3」などと表記される。SDRAMやDDR SDRAMなどのメモリ内部には、半導体記憶素子が格子状に並んでおり、データの読み書きを行う際には、対象となる記憶素子の位置を、行(Row)と列(Column)という2種類の位置情報(アドレス)で指定する必要がある。列を指定する信号をCAS(Column Address Strobe)信号というが、この信号が発行されてから、実際にデータの読み書きが行われるまでにかかる待ち時間(Latency)のことをCAS Latencyという。
SDRAMやDDR SDRAMのメモリ・モジュールでは、CAS Latencyの値の異なる製品が複数ラインアップされている。「CL2」は2クロックで、「CL3」は3クロックでデータを読み出すので、CL値が小さいほど処理速度は速くなる。しかし、CL3とCL2のメモリの性能差は、メモリのベンチマーク・テストでも5〜10%程度しかなく、体感的にはほとんど違いはない。
ただし、複数のメモリ・モジュールを装着している場合、それぞれのCL値が異なっていると、まれに不安定になるなどの問題が生じる場合がある。そのため、メモリ増設の場合、CL値が小さければいいとはいいきれない。可能なら、すでに使用しているメモリ・モジュールと同じCL値のものを使うようにしよう。
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DDR SDRAMメモリ・モジュール上のCAS Latencyの表記 |
このようにメモリ・モジュールのパッケージなどでは、「CAS Latency」ではなく「CL2.5」などと略称で表示されることが多い。
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「CL」で表記されている例:
このモジュールでは、CAS Latencyが2.5クロックであることが分かる。DDR SDRAMの場合、CAS Latencyの値は2.5か2である。SDRAMなら2または3だ。 |
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メモリ・モジュールのスペックを表す文字列:
真ん中の「-25330-」のうち、先頭の2桁がCAS Latencyの値を表している。ここでは「25」すなわち2.5クロックを意味する。なおSDRAMの場合、位置は同じだが1桁で表される(「2」または「3」である)。 |
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ECC(Error Correcting Code)
ECCは日本語に訳すと「誤り訂正符号」となる。メモリのデータ・エラーを検出して自動的に訂正する機能のことだ。信頼性を求められるサーバやワークステーションなどで使われることが多い。ECC機能を使う場合は、プロセッサやチップセットやBIOSがECCに対応している必要があるうえ、搭載メモリすべてをECC対応のものにしなければならない。最近は、メモリの信頼性も高まっていることもあり、多くのデスクトップPCでは、ECCをサポートしていない。たとえECCをサポートしていたとしても、クライアントPCとして使用するのならば、高価なECC対応メモリを使う必要性はそれほど高くない。
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ECC対応メモリの例 |
ECC対応メモリは、外見上は非対応のメモリとほとんど同じだ。ECC機能を使う場合は、すべてのメモリをECC対応メモリにしなければならないので、非対応のメモリがある場合は入れ替えることになる。 |
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片面に(見かけ上)9個のメモリ・チップが搭載されたメモリ・モジュール:
これはDDR SDRAMのメモリ・モジュールだ。SDRAMやDDR SDRAMのメモリ・モジュールの場合、メモリ・チップが9個または18個搭載されていたらECCメモリだろう(非対応なら4/8/16個)。RIMMの場合は、「ECC」とシールに記載されているので、すぐ分かる。 |
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シングル・サイド(single-sided)とダブル・サイド(double-sided)
これもSDRAMやDDR SDRAMのメモリ・モジュールの種類を表す用語だ。大ざっぱにいうなら、メモリ・モジュールの片面のみにメモリ・チップが実装されているのがシングル・サイド、両面に実装されているのがダブル・サイドと呼ばれる*1。ダブル・サイドのメモリ・モジュールとは、2枚のシングル・サイドのメモリ・モジュールを1枚にまとめたものに相当する。つまり、同じ容量のメモリ・チップを搭載するなら、ダブル・サイドの方が2倍の容量を実現できるので、高密度化が可能なわけだ。その半面、ダブル・サイドの方がメモリ・バスに接続されるメモリ・チップ数が多く、メモリ・バスに負担をかけるため、システムに装着可能なモジュール枚数がシングル・サイドより制限されることがある。こうした制限はたいていPCのマニュアルに記載されているはずだ。
*1 厳密にいえば、シングル・サイドとダブル・サイドの分類は、搭載メモリのバンク数で決まる。ここでいうメモリのバンクとは、メモリを管理するときの1単位のことで、基本的にメモリ増設は1バンクごとに行う。シングル・サイドは1バンク、ダブル・サイドは2バンクのメモリを搭載する。ダブル・サイドならたいてい片面ごとに1バンクずつメモリが実装されている。 |
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ダブル・サイド(上)とシングル・サイド(下)のメモリ・モジュール |
SDRAMメモリ・モジュールを基板上面から撮影してみた。黒く見えるのがメモリ・チップで、ダブル・サイドの方は両面に実装されているのが見える。
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Unbuffered(アンバッファ)/Registered(レジスタ)
これらもメモリ・モジュールの種類を表す用語だが、デスクトップPCでは、ほぼ間違いなくUnbufferedタイプが用いられるため、マニュアルやカタログには、あえて表記されないことが多い。しかし、サーバやワークステーションの分野では目にする機会もあるので、簡単に紹介しておこう。
Unbufferedタイプのメモリ・モジュールは、直接メモリ・チップをメモリ・コントローラ(つまりチップセット)に接続している。一方、Registeredタイプのメモリ・モジュールは、メモリ・チップとメモリ・バスの間にRegister(レジスタ)と呼ばれるチップを挿入することで、より多くのメモリ・チップを搭載可能にしている。つまりRegisteredタイプはUnbufferedタイプに比べ、より大容量のメモリ・モジュールを実現できるというメリットがある。また、メモリ・モジュールの枚数もRegisteredタイプのほうが多めに搭載できる。
SDRAMとDDR SDRAMのメモリ・モジュールには、それぞれUnbuffered/Registeredの両タイプの製品がラインアップされている。両者の特徴を下表に記そう。
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Unbufferedタイプ |
Registeredタイプ |
用途 |
デスクトップ/ノートPC |
サーバ/ワークステーション |
コスト |
低い |
高い |
モジュール1枚当たりのメモリ容量 |
− |
Unbufferedより大容量 |
1本のメモリ・バスに実装可能なモジュール枚数 |
2〜3枚 |
3〜4枚以上 |
データ転送時のバンド幅 |
− |
Unbufferedと同等 |
データ転送時のレイテンシ |
− |
Unbufferedより1クロック分遅い |
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UnbufferedとRegisteredの違い |
両者の最大の違いは実装可能な総メモリ容量であり、それぞれの用途を分けている。 |
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Registeredタイプ(上)とUnbufferedタイプ(下)のメモリ・モジュール |
これはDDR SDRAMのメモリ・モジュールだが、SDRAMでも外観はほぼ同じだ。 |
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レジスタ・チップとその周辺回路:
主要な信号線はこのレジスタ・チップに接続されている。各信号は信号タイミングを基準となるクロックにそろえたり、信号の電流を増幅したりしてからメモリ・チップに分配される。こうした仕組みにより、Unbufferedより多数のメモリ・モジュールをシステムに搭載できる。 |
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次のページでは、自分のPCに搭載されているメモリの種類を見分ける方法について解説しよう。
更新履歴 |
【2002/01/22】 「コラム:Unbuffered(アンバッファ)/Registered(レジスタ)」にあるメモリ・モジュールの写真のキャプションにて、
「Unbufferedタイプ(上)とRegisteredタイプ(下)のメモリ・モジュール」
と記していましたが、写真との対応が誤っていました。正しくは、
「Registeredタイプ(上)とUnbufferedタイプ(下)のメモリ・モジュール」
です。お詫びして訂正させていただきます。 |
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